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最終更新日:2024.11.27
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職場を明るく楽しい場所に変えたい!〈尾山さん〉- やぶひと Vol.02

2024年11月27日

ライターの伊木(いき)です。

社会的処方推進課の皆さんと一緒に、2023年8月からお仕事をしています。その中で養父市内を中心にさまざまな活動をしている人たちにお話を伺っていて、すごく魅力的な人がたくさんいることに気付かされました。この記事は個人的な視点で、地域内の活動を「人」にフォーカスしてご紹介するシリーズです。

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今回インタビューさせていただいた尾山さんは、養父市内の医療関係でお仕事をされていて、養父市社会的処方推進課が主催する連続講座〈KANAUカレッジ〉の受講生でもあります。

インタビューでは「社会的処方との出会い」と「今、挑戦していること」を話してもらっています。

尾山さんは令和5年度に社会的処方推進課(当時は「社会的処方推進室」)が開催したリンクワーカー研修に参加されて、さらに夏にYBファブで職場のスタッフ数名と一緒に超高齢社会体験ゲーム〈コミュニティコーピング〉体験会に参加。そして10月に職場で研修会を企画し、有志のスタッフさんたちに参加してもらい〈コミュニティコーピング〉体験会を実施されました。

💡コミュニティコーピングとは?
コミュニティコーピングは、社会的孤立を解決するための大切なヒントに気付くことができるゲームです!正式名称は『超高齢社会体験ゲーム コミュニティコーピング』。(コミュニティコーピング公式ウェブサイト参照)

ということを前置きに、インタビュー内容へどうぞ!


職場でのモヤモヤと〈社会的処方〉との出会い

伊木:今日はよろしくお願いします。

尾山:よろしくお願いします。

伊木:尾山さんと僕は元々少しつながっていて、昨年の9月に僕を介して社会的処方推進課(当時は「社会的処方推進室」)の職員さんとつながってコミュニケーションを取るようになったと思うのですが、その前から「社会的処方」という言葉や活動は知っていましたか。

尾山:知りませんでした。

伊木:市役所にそういう部署ができたことは…。

尾山:それも知りませんでした。去年のリンクワーカー研修に来られた職場のスタッフも知らなかったと言っていました。その時は〈社会的処方〉という言葉自体ぼんやりとしか知らなくて。

伊木:まだまだ認知度は低いですよね。

尾山:昨年は職場のことでずっとモヤモヤしていました。退職しようか、この状態だったらちょっともうダメかもしれないと悩んでいて、退職届の書き方とか調べていました。そんな時に社会的処方推進課(当時は「社会的処方推進室」)の皆さんと出会いました。当時は今みたいに「職場で研修をしたい!」とかはなくて、ただ興味がわいて「社会的処方という活動自体が、職場にとってプラスになるんじゃないか」みたいな漠然とした期待だけがありました。

伊木:モヤモヤの中に一本の光が差し込んだ、という感じでしょうか。

尾山:そうですね。なにか力になってくださるかもしれないなという感じでした。参加を予定していた令和5年度1回目のリンクワーカー研修(令和5年11月開催)が私情で参加できなくなってしまって。そこに参加したスタッフから「めちゃくちゃ良かった」と聞いたんです。その頃から職場のスタッフから「外部の人とつながるのは必要だ」という声が聞こえ始めました。

伊木:リンクワーカー研修を受けてそういう考え方になったのですね。

尾山:元々はそうじゃなかったけど、そうなっていました。職場では考え方も凝り固まっていたのですが、他のスタッフも「今までの考え方が崩れた」と言っていて、私も同じことを思いました。患者さんが中心にいない支援をしていることに気付いたのが、大きな一歩でした。その気付きがとっても大きくて。

研修会の企画・開催にチャレンジ!

尾山:先日、私が企画した職場での研修会でその気付きを得たスタッフもいます。衝撃だったって。

伊木:ちょっとずつ思考の波というか、輪が広がっていっていますね。

尾山:広がっています。参加すると大体みんな視野が広くなったと言ってもらえます。それもあって、今も私宛に「今年のリンクワーカー研修を受けたい」という連絡が何件も来てるんです。

伊木:連絡をくださった方は過去のリンクワーカー研修に参加された方々ですか。

尾山:初めて参加する方ですね。

伊木:参加したいと思ってもらっている理由は、周りのスタッフさんたちが「よかったよ」と言ってくれているからですか。

尾山:そうですね。あとは研修会を実施してみて、私がいる部署では「つなげること」が業務に関係しているんですけど、それが業務に直接関係のない他の部署のスタッフたちも「必要だってすごく感じた」って言ってくれたんです。わざわざ私の部署に私宛に電話をかけてこられて「あの研修、すべてのスタッフに受けさせた方がいいんじゃないか」って言ってくれて。今は「2か月に一回ぐらい実施して欲しい」と言われていて、それに向けて動いています。

伊木:そのぐらい地域の人たちとのつながりが大切なことだったのですね。他部署の方々が研修会に参加されたきっかけは?

尾山:実は去年のリンクワーカー研修に参加してくださった部署のスタッフがすごく良い感想を言ってくれていて。夏のコミュニティコーピング体験会(以降「コミュコピ体験会」)に一緒に参加したスタッフも、周りに口コミのように「めちゃくちゃ良かったからやってみて」って言ってくれています。先日の職場での研修会ではチラシを見て「〈社会的処方〉のことが分からないから、ちょっと参加してみようかな」というスタッフもいました。チラシに「つながる支援」という言葉も書いていたので、「このつながる支援って何?」みたいな。

伊木:「つながる」「つなげる」という言葉の意味が違ったということですね。

尾山:そもそも職場では制度ありきとか、法律で決められている「つながり」の考え方があまりにも当たり前になっているので、想像がつかないんです。

伊木:それを先日の研修会でやったコミュコピ体験会では疑似体験できたということですか。

尾山:擬似体験できていたと思います。直接自分たちの仕事に役立てられるかというと少し違うから「(業務内容と)ズレてる」って言われると思っていました。でも全然そうではなくて「こんなのがあったんだ」みたいな感じで、返ってきた反応もすごく良くて。「もっと地域とつながる研修会をしてほしい」など、いろいろ意見が出ていました。「地域にどのような職種があって、どんな活動をされているか知らなかった」とか。

研修会をやってみる、その前は?

伊木:リンクワーカー研修では他職種の人が集まるじゃないですか。僕の中で「同じ領域なのに集まる機会って案外ないんだ」と思っていました。

尾山:ないんですよね。特定の方はちょこちょこあったとしても、周りとの関わりがあまりない人も多いと思います。案外つながらないんです。私たちが患者さんをつなげようとしても、今はまだ私たち自身が情報を持ってないんです。もっと地域に出る時間があればいいかもしれないですね。みんなそんなこと考えたくないって言うと思っていました。けど研修をすると意外にもみんな楽しそうに「もっと地域とつながりたい」と言い始めたのが「すごいなあ」思って。これまでも言わないだけで思っていたのかもしれません。

伊木:尾山さん自身が〈社会的処方〉に希望を見出して、「それって良さそうだな」から「これを広めたい」に変化するまでに、どうしていいのかわからない時期があったんじゃないでしょうか。その時期ってどうされていたのかなと。

尾山:その時期はただ情報を調べていたというか、全国に〈社会的処方〉」でどんな活動をしている人がいるんだろうみたいな。一度、コミュニティーナースに辿り着きました。「私、コミナスになりたい」と言った時期があったんですけど、今はちょっと違うのかなと思っています。コミナスになっちゃうと今の職場とのつながりがなくなるから。一番始まりが「今の職場でスタッフを笑顔にして働く、自分も笑顔で働き続けられる場所にしたい」だったのに、ぶれちゃうなというのがあって。そこから自分で企画する研修会の話にたどり着いたんです。そこから実際の研修会を企画しました。まずは自分でやってみようと。去年のコミュコピ体験会に参加した人の反応がすごくいいヒントになりました。自分の中で「こういう人を増やせばいいのかな」と。

伊木:研修会をやるまでは良い反応が返って来るなんて思っていなかったということですか。

尾山:思ってないです。私があまりにしつこく言うから来てくださったのかな?とか、私が反応聞くから良い反応してくれているだけか。そんな興味ないだろうなと思ってました。

伊木:実はみんな同じ思いだったのかもしれないですね。

尾山:だったのかもしれないですね。何とかしないといけないとは思っていたけど、1人のスタッフが動き出しても職場は変えられないって思っちゃうんですよね。仕事量を減らすとか、スタッフを増やすとか、そんなのは私ができることじゃない。でも間接的に明るい楽しい職場になればスタッフが増えるかもしれないっていうところに最終的には辿り着いていきました。

伊木:まだその真っ最中ということですね。

尾山:足掻いている最中なんですよ。すごく大変なこともいっぱいあるけど、それが楽しくなってきています。私みたいな人がたくさん出てきて、私自身が周りとつながっていけば、患者さんとつなぐこともできるのではないか。制度ではつながらない支援者さんも地域にはたくさんいらっしゃると思います。例えば、趣味の教室とか、世話好きの人とか、そういう人たちとつなぐのって別に制度が必須ではないと思うので。それはできるかもしれない。

何がモチベーションになってるの?

伊木:尾山さんの中でモチベーションになっていることって何ですか?

尾山:同じように参加してくれたスタッフのみんなが、私と同じように可能性を感じているというところがモチベーションなんです。うまく言えないですけど。何て言うんでしょう、参加した人みんな同じ気持ちになっていて。私が最初にリンクワーカー研修に参加した時に地域の人と繋がって「地域ってもっと可能性あるんだな」みたいな気持ちになって。制度やサービスに頼らない方法があるんじゃないか。それで私たちも救われるって言い方はおかしいですけど、もっと明るく元気に仕事できるかも。苦しい状況を何とか打破できるかも。みたいな可能性をぼやっとですけど。全然具体性はないですけど、ぼやっとした可能性をみんなが感じてくれて、なんとなくそれを私にフィードバックしてくださるので、それがモチベーションです。

伊木:それは直接連絡もらえたり、声を掛けてもらったり?

尾山:しますね。廊下とか。今回の研修会をした結果、こういう気持ちになったよというのを伝えてもらえるし、本人から言われるのももちろん嬉しいんですけど、その周りの人、参加してない人から「私も参加したくてウズウズする」「やる気が出る」「地域と繋がりたい」という声を聞くと、頑張ろうみたいな。良い反応で周りに言ってくれているのが嬉しいです。以前、KANAUカレッジで「職場での対話が足りない」と言われたことがあったんです。本当に足りないんだと思いました。研修会をしたことで廊下ですれ違っても「あ、この前は」ってなるし、そしたら会話が増えていってギクシャクが少しなくなるんじゃないかなと思っています。研修会の中身って、みんなあまりよく分かってないから「どういうことなんだろう」とか「これこうなんやって」という話で盛り上がったらしいんです。

伊木:とても良いことですね。きっとスタッフさんも職場での気持ちがすごく良い方向に変わってきてるんですね。

尾山:ですね。そこも大きいモチベーションです。それがないと頑張れないから。同じようなことを何回かやってみようと思っています。これからは12月と2月に同様の研修会を開催する予定です。

伊木:研修の他にも何かこういうことをしてみたいなっていうのはありますか。

尾山:最終的にはというか、一番やりたいのはリンクワーカー研修みたいな感じで、地域の支援者の方と、職場のスタッフとか、みんなが集まれる機会が作りたくて。研修って名前じゃなくてもいいし、何の資格も持ってない人がいてもいいんです。

伊木:いろんな人がざっくばらんに集まって繋がれる場みたいな感じですね。

尾山:そうです、そういうのがやりたくて。今はまだハードルが高いので、参加したい人も少ないかもしれないですけど。でも参加してみたいって人は何人かいるんじゃないかなと思ったりしています。

伊木:その場でどういうことが起こったらいいなと思っていますか。

尾山:私たちって「どうしたらよかったのかな」っていう悩みがいっぱいあるんですよ。それに対して地域の方々から「え、こんなんがあるのに」「こういうケースがあったけど、こんなことがあったよ」とか、いろんな話が聞ける情報交換会のような場ですね。自分は実際それをやってないけど、聞いて次に同じようなことがあった時にそうしてみようかなっていうのが増える機会になればいいな。自分がそういう情報が聞きたいというのもあります。

伊木:そうですね。みんなで情報交換しながら、こうやったらいいよみたいな話が少しずつ出来ていくといいなと思います。これからも応援しています。ありがとうございました。

尾山:こちらこそ、ありがとうございました。

この記事を書いたライター 伊木 翔